腹痛とは
腹痛とは、みぞおちからお腹の下辺りまで起こる痛みを指します。激しい痛みや突然起こった痛み、響くような痛み、鈍痛など性状は様々です。痛みの部位や感じ方は原因によって異なります。お腹の上辺り、すなわちみぞおち付近は、胃や十二指腸、胆のう、膵臓の痛みを感じていることがあります。お腹の下辺り(下腹部)は腸の他に婦人科疾患や泌尿器疾患により痛みを生じることがあります。まれに狭心症・心筋梗塞などでも腹痛を感じることがあります。強い痛みがある場合には早めの受診を心がけましょう。
腹痛を引き起こす疾患
大腸がん
盲腸や上行結腸など右側の大腸がんは症状が出にくいといわれています。一方、S状結腸や直腸など左側の大腸にがんが生じると便秘や下痢、血便がみられます。がんが進行して大腸が閉塞してしまうと腸閉塞となり、腹痛や吐き気・嘔吐などの症状が現れることもあります。
膵炎
アルコールなどが原因で膵臓の消化酵素が活性化して膵臓自らに障害を起こす病気です。食後や飲酒後などにみぞおちや背中に突然強い痛みを感じます。重症化すると命にかかわることもあります。
膵がん
膵がんは早い段階から周囲の組織や臓器を破壊しながら大きくなるので、進行するとみぞおちから背中の痛み、おなかの張りなどの症状が現れるようになります。また、膵炎を生じて高熱や強い上腹部の痛みなどを引き起こすことがあります。膵頭部にできたがんの場合は胆管が閉塞して黄疸や皮膚のかゆみなどが見られるようになることもあります。
アニサキス
イカ、サバ、アジなどに寄生しており、生きたまま食べてしまうと虫体が胃の粘膜に潜り込み、食後十数時間後から数日後に、激しい腹痛、吐き気・嘔吐などを伴って発症します。虫体は7日程度で死滅するので、同時に症状も治まりますが、胃カメラで虫体を取り除くことで痛みは消失します。食酢、塩漬け、醤油やわさびをつけてもアニサキスは死滅しません。魚の内臓を生で食べない、食べる前に目で確認する、-20℃で24時間以上冷凍する、70℃以上で加熱する、などで予防します。
胆石、胆嚢炎
胆石が胆のう管を閉塞させると、胆汁の流れが悪くなり細菌感染を起こして胆嚢炎になります。食後の右上腹部の間欠的な痛みが特徴で、重症化すると黄疸や発熱を生じます。
潰瘍性大腸炎
腹痛の他、下痢や血便、食欲不振などの症状がみられます。重症化すると発熱や体重減少などの全身症状を呈し、粘膜からの持続的な出血により貧血になってめまいや動悸、息切れなどの症状がみられるようになります。
クローン病
腹痛、下痢、血便、食欲不振などの症状がみられます。小腸や大腸での栄養吸収能力が低下するため、低栄養による体重減少を引き起こしたり、発熱、貧血、だるさといった全身症状が見られたりすることもあります。さらに腸閉塞になると、便秘や吐気・嘔吐もみられます。
虚血性腸炎
腸管の血流が悪くなることで大腸に炎症や潰瘍を起こしている状態です。腹痛の他に血便や下痢がみられます。
感染性胃腸炎(病原性大腸菌、カンピロバクター、ノロウイルスなど)
いわゆる食中毒です。腹痛の他、下痢、血便、吐き気、嘔吐、発熱などがみられます。
急性虫垂炎
腸管の一部である虫垂に炎症が起こる病気で、盲腸とも呼ばれています。最初は食欲不振や吐き気、みぞおちの痛みなどが多く、次第に痛みの場所が右下腹部へ移動し、腹膜炎の状態になると高熱を伴うことがあります。
憩室炎
腸のくぼみに感染が起きた状態です。腹痛の他、発熱、吐き気、嘔吐などがみられます。
腸閉塞
お腹の手術による癒着や大腸がんなどが原因で腸がふさがってしまい、便やガスが肛門へ移動できずに詰まってしまった状態です。腹痛の他、お腹の張り、便秘、嘔吐などがみられます。
尿路結石、膀胱炎など泌尿器科疾患
尿管結石や腎盂腎炎ではわき腹や背中、腰の痛み、血尿がみられ、腎盂腎炎では高熱が出ることもあります。膀胱炎では下腹部の痛みや頻尿、残尿感がありますが、熱はでません。
卵巣茎捻転、子宮外妊娠など婦人科疾患
卵巣茎捻転は、卵巣腫瘍がお腹の中でねじれてしまった状態で、卵巣周囲の血流が悪くなり激しい痛みを生じるとともに、その部位の組織が徐々に壊死してしまうため、早急な診断と治療が必要です。子宮外妊娠は受精卵が本来着床すべき子宮内膜以外に着床することで、全妊娠の0.5~2%程度に起こります。症状は下腹部痛、無月経、性器出血などで、受精卵の成長が進み卵管破裂を起こすと、強い下腹部痛や腹腔内出血によるショック状態となることもあり、大変危険です。
狭心症、心筋梗塞、腸管膜動脈血栓症
狭心症や心筋梗塞などの血管系の病気では突発的に締め付けられるような強い痛みがおこります。胸焼けや冷や汗、吐き気・嘔吐を伴うこともあり、痛みは左肩、左腕、顎、歯、背中など広い範囲に響くように放散します。